東京高等裁判所 昭和55年(ラ)1271号 決定
競売開始決定は競売申立債権者の申立に係る債権を取り立てるためにされるものであり(競売開始決定後にその手続において配当要求の申立等が認められることをもって配当要求債権者等のためにもなされているものとはいえない。)、右競売開始決定によって生ずる差押の効力を害しない限り、債務者は右決定による拘束を受けないから、競売開始決定後も競売開始決定の目的たる不動産を処分することができ(従って、右処分の効力は競売申立債権者を害しない範囲で効力を認められることになる。)、債務者が右不動産を第三者に譲渡して所有権移転登記を経由したときは、申立債権者(申立債権者についても右所有権移転登記のなされるまでに右手続に載せられた債権額に限られる。)以外の何人に対してもこれをもって対抗することができると解するのが相当である。そうすれば、右登記後は他の債権者及び右申立債権者が他の債権をもって右競売開始決定によって開始された手続において配当要求をすることは許されないことになる。このように解した場合においては、本件に適用される民訴法六二〇条一項等との関係が問題になるのではなるかとの疑問を懐くむきもあろう。その疑問とは、右条文は執行手続における平等主義に基づくものであるところ、右のように考えることは、強制競売の申立をした債権者の申立に係る債権につき優先主義を認めることになり、本件に適用される右条文等に基づく平等主義に反するというものである。しかし、このような非難はあたらない。なんとなれば、右のような結果は、競売開始決定(それに基づく差押の効力の発生)後の目的不動産の所有権移転という事実によって惹起されるものであって、競売開始決定(それに基づく差押の効力の発生)と同時に生ずるものではないからである。従って、右のような考え方は右条文及び本件に適用される強制執行における民訴法の平等主義の建前に反するものとはいえない。
右に説示したところに基づいて考えれば、本件において、債務者久保田つなが本件競売不動産を久保田源司に所有権移転し、昭和五二年一〇月三日その旨の登記を経由したのち、本件競売申立債権者青工商事株式会社から昭和五三年二月一八日なされた配当要求の申立は法律上許されないものであるから、これを不適法として却下すべきである。
そうすれば、本件配当要求の申立を却下すべきものとし、これに対する異議申立を棄却した原決定は相当で、抗告人の抗告は理由がない。
(鈴木 糟谷 渡辺)